【実体験】国際恋愛→結婚|「親の同意」という大きな壁、攻略の鍵

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はりねずみ
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国際恋愛を経て結婚を考えている人がいます。親に紹介しようと思うんだけど、経験談ってありますか?何に気をつけるべき?


日本で、親に対して付きあっている相手を紹介。これって誰しも少なからず緊張します。


この記事では、この瞬間を迎えた方が考えておくべきことをまとめています。


こんにちは、れとです。

米国、ヨーロッパなどを転々とする駐在生活を10年以上送ってきました。引越しだらけの生活で、恋愛は「付きあう→遠距離→別れる」の繰り返し。恋愛歴は20年以上、うち国際恋愛歴約15年、本格的な婚活が7年です。挫折、別れ、試行錯誤の末、アラフォーで世界一素敵な方と結婚しました。今は一緒にアメリカに住んでいます。



親に彼を紹介する機会は、毎回緊張するものです。しかし、私の場合、付きあいだしてすぐに親に合わせる傾向にありまして…。なので、うちの親は、私の元彼に軽く5人は会っています。


うち、90%が外国人です。そんな私の親も、最初の頃は「相手が外国人」という事実には良い顔をしていませんでした。



私は、最終的に外国の方と結婚しました。しかし、婚姻届を出す1日前に親に結婚を認めてもらえない事態に。これは、私にとっては大事件でした。


これは、相手が外国人だったからというよりも、日本文化的に状況を受け入れるのが困難だったためです。この事件については、おまけで実体験小説として最後のまとめに記載します。



私たちは、最終的には私の両親に祝福されて婚姻に至りました。しかし、親の同意が得られなければ、あのとき婚姻に至ることはできなかったと思います。



結婚で、親を味方にすることは大切な手続きです。国際結婚に至る際に、親という最愛の仲間を自分の味方にするために何ができるかまとめます。



この記事を読めば、国際結婚で親に味方になってもらうための方法がわかります。

【実体験】国際恋愛→結婚|「親の同意」という大きな壁、攻略の鍵

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1つめの攻略の鍵は、「親から自立し、自分の選択への責任能力を示せるようになること」です。


なぜなら、親に少しでも依存が発生する状況は、自分の選択肢への責任を自分でとれていない状態だからです。親からすれば、子どもが選択を失敗すれば、親にさらに依存する可能性が見えます。


「自分の選択肢により生じた問題は、すべて自分で解決できる」とはっきり言える状態に整える必要があります。

最初、私が親に外国人の彼を会わせたのはまだ20代はじめのアメリカ留学中のことでした。その時父に言われたのは、「もっと堅実な選択をしないと。」という言葉。


「堅実」な選択とは何かというのは、その時深く聞いてはいません。外国人で芸術家だった彼は、私の父親にとっては「堅実」な相手では無かったようです。



その彼とは、その後遠距離恋愛を2年続けるも、相手の方向性と自分の方向性が合致せず、同じ国に生きるのは困難なことが次第にあきらかになったため、将来の展望が描けずに別れました。

しかし、その時思ったのが、「恋愛・結婚相手について、親を説得するのは面倒だ」、ということ。


親を説得するにあたり、自分の力で生きていけることを証明できなければ、自分の選択肢が正しいことを証明するのは困難です。親の経済力に依存しているようでは、親を説得できません。


この時に強く親から自立し、自分の選択への責任能力を示せるようにならなくてはと感じました。



当時、私は留学のために親に借金をしていて、親への依存が少なからず発生していました。この状態をすべて解消し、自分で自分の責任を証明する必要がありました。

国際恋愛から結婚になる際に理解を得るには

結論から言うと、理解を得るには、具体的に以下のようなことをすれば理解が得られます。

  • 親に何も言われないレベルに自立する
  • 国際恋愛を何度もし、相手を毎回紹介する
  • 年齢を重ねる


詳しくみていきます。

親に何も言われないレベルに自立する

「自分の選択の責任は、すべて自分でとる」という姿勢を親に示すことができれば、親は子どもの選択に対し干渉することができなくなっていきます。住居、金銭、保険、すべて親に頼ることの無い状態を確立します。


住居を自分で確保し、借金を完済し、親から離れた場所で仕事をすれば、だんだんと親の子供への干渉は減っていきます。

国際恋愛で相手を紹介する機会を増やす

長期戦です。1人ないしは複数の人と国際恋愛をして、外国の人に多く会い続けると親も慣れてきます。相手の選択肢は世界中にあると考えるのが当たり前の状態という考えを、親に定着させます。

年齢を重ねる

35歳を超えると、交際相手に対してとやかく言わなくなります。この年齢になると、結婚対象相手が現れても余程の理由が無い限り、親から反対を受けにくくなります。(私のまとめ記載の体験談は35歳を超えていましたが、発生しました…。)

国際恋愛/結婚の場合は、早めに親に情報共有を

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親は、自分を生み、育ててくれた大事な存在です。世界一のあなたの味方です。結婚してもそれは変わりません。



親には、情報共有はなるべく早めに行うことをおすすめします。私の親は、私が外国人と結婚するのが決まってから真剣に英語を勉強しだしてくれ、会った時のために準備をしてくれました。

国際恋愛/結婚で親に紹介するときに準備しておくこと

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以下はきちんと準備することをおすすめします。

  • はじめて両親と相手が会うのに相応しい場所
  • 食べられないものを共有しておく
  • 彼/彼女に言いたい事を日本語で用意しておいてもらう


ひとつずつ見ていきます。

はじめて会うのに相応しい場所

お店選びは、きちんと予約をとっておくことを心からおすすめします。

私は東京だからどこかいいところあるだろう、と予約せずに当日お店を決めるということをした結果、煙だらけの居酒屋になり、それが初対面の思い出になってしまいました。まぁ…ご飯はおいしかったのでよかったんですが、ちょっと後悔しています。



親と自分達の印象すら左右してしまうので、お店はきちんと選んでおきましょう。

食べられないものを共有しておく

ハラル、コーシャ、アレルギーなど、食べ物に制限がある場合は前もって伝えるのが重要です。



食卓に食べられないものが一緒に並ぶことすらアウトの国もあります。ご両親にもその点について事前に伝えることで、店や料理を選ぶ際に抑えておくべきポイントを理解できます。

彼/彼女に両親の話す言語で挨拶を覚えておいてもらう

覚えておいてもらえると会話が円滑になるのが以下のフレーズです。最低限覚えておいてもらいましょう。

  • はじめまして
  • ありがとうございます
  • どうぞ/お願いします
  • はい/いいえ
  • おいしい
  • うれしい
  • 楽しい
  • すごい



国際恋愛/結婚で相手の親に会うときは

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自分が相手の両親に会う場合は、逆に自分が準備を整えておきます。そして、外国では、相手の両親に会うのに日本のようにかしこまる雰囲気はありません。


友達に会うような感覚で、リラックスしていきましょう。(もちろん、相手の国や宗教にもよります…。)



私の夫の場合、私の両親に会うときまったく緊張ゼロで、私の両親が緊張していました…。

相手の両親の話す言語で挨拶を覚えておく

自分が相手の親に会う場合は、相手の親が話す以下のフレーズを覚えておきましょう。

  • はじめまして
  • ありがとうございます
  • どうぞ/お願いします
  • はい/いいえ
  • おいしい
  • うれしい
  • 楽しい
  • すごい



言葉は、1単語でも多く学べば学ぶ程、心が通じやすくなります。

文化背景について学んでおく

特に大きいのが宗教的要素が強い場合です。宗教では、日本人が気づかぬタブーなどがあるため、前もってその宗教について知識を入れておきます。


自分の宗教観について聞かれることもあるので、なんとなくで良いので頭の中でまとめておきましょう。

  • Buddhist:仏教
  • Shintoist:神道
  • I do not hold to any particular religion:特に宗教はない



私の場合、”I’m half Shintoist, and half Buddist.”と答えています。神社で生誕時にお宮参りをし、寺社に墓を持つ日本の文化では、1つの宗教だけではなく、複数の宗教に寄りそって生きているのが一般的ですよね。


ちなみに、「無神論者(atheist)」と言うと、神の必要性について説かれることがあります。

国際恋愛で親が絡む前に語学を伸ばしておくのがおすすめ 

日常的に語学を伸ばしておけば、いざという時に役に立ちます。私は、Duolingoで夫の言語を学習しています。Duolingoは無料ですし、カジュアルに学びたい方におすすめできます。



英語であれば、本格的に学べる教材が色々あるので、挑戦してみるのをおすすめします。
有名なもので、スタディサプリENGLISH(新日常英会話コース)がおすすめです。3分程のスキマ時間にできる仕様になっていて、英語が伸びる工夫がつまったアプリで続けやすいです。無料で7日間試せるので、一度試してみてください。

>>> スタディサプリENGLISH(新日常英会話コース)


レベルが高い方には、ビジネス英会話コースもあります。

>>> スタディサプリENGLISH(ビジネス英会話)

まとめ

国際結婚に前向きでないご両親の方はまだまだ多いようです。

もう世の中はかなりグローバルで、相手が人間なら、世界中から相手が見つかっただけでも素晴らしいと思うのですが…。しかし、親にとっては子どもは宝物で、色々気にかかるのだと思います。

一方で、親御さんにも言いたいのは、

子どもが自立して生きているなら、自分の人生の選択肢を自分で選ばせ、結果について自分で責任をとらせてあげてほしい

ということです。


自立できているのにいつまでも干渉していたら、将来的に子どもが自分で必要な選択ができなくなります。


そして、他人の選択に依存して生きていると、選択の結果について人に責任を押しつけるようになりかねません。


子どもは、一生親の元にいるべきでは無いので、少しずつ自分の選択には自分で責任をとることを学ばせるべきです。

そして、まだ自立していない方は、まずは1人で生きられるレベルに自立しましょう。


自分の生活をすべて自分の責任で運営できる状態に至っていないようであれば、いまだに親の資本が入っているわけで、親に意見されてしまっても仕方がない立場です。


冒頭に書いた「婚姻1日前の親との出来事」については、下に記載します。興味のある方はどうぞ。

小説風でお届けします。長文です。


「無職との結婚はダメ、相手の就職先が決まってからにしなさい。」と母はいった。

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その日は、婚姻予定日の1日前だった。


私はそわそわする気持ちを押さえきれない。口元がゆるみ、つい1人でにんまりする。


いつもiPadの四角い画面の中だけで動いている彼と、現実世界で毎日会える日々が近づいている。


…長かったな。

彼とは、ネット上で知り合ってときから遠距離恋愛だった。2人をつなぐ糸は、テキスト、週末のビデオチャットと4か月に一度のデート。

現実で一緒に過ごせた後は、その後空港での見送りが辛かった。遠距離恋愛は、やっぱり辛い。



あれは、出会ってから1年後のことだった。彼は、私の住むヨーロッパの街に2週間程滞在していて、その日は滞在最終日だった。

キッチンで包丁を手に鶏肉を切る私の後ろで、彼がぼそっと呟いた。

「これ…サイズ確認してくれる?帰る前にサイズだけ確認したくて。」

後ろを振り向くと、彼がサイズの大きなピンク色の婚約指輪を持って恥ずかしそうに立っていた。




あの日から半年が経過した。


国際結婚にはさまざまな書類が必要で、お互い自分の国に住んでいないので書類を揃える作業に手間取った。

作業自体は大変では無い。けれど、何をするにも時間がかかることが厄介だった。ひとつひとつの書類の入手には、数週間がかかり、しかも書類には有効期限があった。



アメリカに住む彼は、ひと月以上前にコスタリカに帰り、2週間程滞在してぎりぎりですべての文書を入手した。ようやくお互いのすべての書類がそろって、明日東京で届けが出せるのだ。

私はヨーロッパ駐在中で、このときは日本に3週間の帰省をしていた。久しぶりに過ごす実家。両親には以前彼を紹介していて、明日彼を空港で迎えたあと、翌日に実家に連れて来る予定だった。

明日は羽田空港で出迎えだった。これから2週間は一緒に過ごせる。

空港で出迎えて、その足で区役所で婚姻手続きを開始する予定だった。日本と彼の国であるコスタリカへの両方の婚姻手続きは東京で可能で、東京での手続きには計2週間以上を要する。

私達が日本に滞在中手続きを全部終わられられるかどうかはぎりぎりだったけれど、どうにかすべての手続きを終わらせる算段でいた。

そのあと、お互いばらばらな国に帰った後も、手続きは続く。どちらのいる場所に一緒に住むのにも相手の国に入るための査証申請作業が待っている。査証申請にも数か月を見こんでいた。

一緒に住めるのは、早くてもまだ半年以上かかる見込みだ。

書類を整理していると、突然携帯電話が鳴った。もうすぐアメリカを出発する予定の彼からの連絡だった。

「はい、もしもし」

電話に出ると、彼は突然言った。

「今から出発するんだけど…。あのさ、ごめん、来月、職を失う可能性が高くなった。たぶんやめる。上司と今日話したけど、問題が解決しなくて。」

実は、この「無職になるかも問題」は以前から出ていた。その時は、「そうなったら私が仕事のある日本に住めばいいね。」と言っていたので、私は今回も動揺せずに「そっか、大変だね。」とだけ返答した。誰でも転職は1度や2度はするものだし、一時的に無職になることなど、大きな問題では無い。

しかし、彼は、

「こんな状態でも婚姻の手続きをして大丈夫か、れとのご両親にきちんと確認して。念のため。」

といった。

私は、

「…うん、わかった。話して結果伝えるね。」

と電話を切り、しばし考え込んだ。


両親はどう反応するだろう。しかし、確かに彼が無職になることを黙っているわけにはいかない。携帯電話を持ったまま、両親のいるリビングルームに向かった。

部屋に入ると、彼が仕事を失う可能性があることを静かに両親に伝えた。

「でも、私は働いてるし、マニュエルもすぐ仕事探しするし、問題はないよね。」

とさらりと。

しかし、父と母の反応は、私の予想したものと違った。

「ダメでしょ。それはダメよ。…無職になる人となんて結婚はダメ。時間が無いからって、無職の人と焦って結婚しちゃだめよ。一度待ちなさい。彼が職業をえてからにしなさい。」

「え?」

全身を一瞬で焦りが駆け抜けて、緊張が体を包み込んだ。体中にじわりと汗がにじむ。

ー 何を言ってるのかわかってるのか、この人達は。

私達は2人とも職業に10年以上就いている立派な社会人だ。そして、2人とも仕事を続ける意志を持っている。そんな2人が、1年以上も片道15時間以上かかる距離を挟み遠距離恋愛してきたのだ。そのうえ、私は、生まれてはじめてのプロポーズにやっと辿り着いたという思いだった。

それから、婚姻のための事務的な準備を2人でしゅくしゅくと、半年かけておこなってきたのだ。すべての書類を揃えるには、さらに半年を要する。お互いの国に帰れる機会がなければ、もっと長い時間がかかる。

…やり直しってこと?全部やり直し?

私も彼も、日本に来ることはめったにない。他の国での婚姻は、コスタリカ滞在時以外は難しい。今回結婚できなければ、次に結婚できるかもしれない時期はいつだろう。

私が次に長期休暇をとれるのは、半年以上先のことだ。文書は有効期限が切れるからすべて取り直しだ。婚姻手続きを終えたって、その先には査証の取得が必要なのだ。

まだまだ一緒に住むまでの道のりは長い。そして、私はもうすぐ40歳で、確かに焦っている。私は、結婚できない運命なのか…。頭の中で考えが一気に爆発する。

焦った私は、すぐにまくしたてた。

「でも、人生色々あるから、無職になる瞬間だってある人はあるよね。無職の瞬間がまったくない人生の人なんて世の中にいないでしょ?今の時代。もうすでに結婚してたら、相手が職業が無くなるからって離婚てことにもならないし。そういう瞬間もお互い支えていくのが結婚じゃないの?」

「旦那さんに職業が無かったら、全部自分が支えることになるっていう意味がどういうことかわかってる?」と父はいった。

ーそうなっても、その状態をお互いに支えあうのが結婚だ、と私は思っていた。別に男性が無職になったところですべてが終わりになるわけじゃない。

この後、深夜にも関わらず家族会議に突入した。

私が述べたポイントは以下だ。

  • 私は私の仕事がある。何かあっても私の仕事で生きていける。
  • 彼が無職になったら、しばらくは私が支えればいい話。
  • 彼は専門職エンジニアだから仕事は必ずある。
  • 私の人生の選択の責任は私がとるのだから、この結婚だけは前に進めさせて欲しい。
  • 今回の滅多にない2人の来日の機会を逃せば、次に結婚できる機会は近い将来には無い。


しかし両親は折れなかった。がんとして、「無職との結婚はダメ。」と言い続けた。

これは、日本の文化背景?男性が無職だと結婚すべきじゃないなんて、日本文化背景にそういう観念があるんだろうか。

一時的に無職になることなど、他の国じゃ結婚できなくなるほど大きな問題ではないと思われた。実際のところはどうかわからないけれど。

私は、途方に暮れ、一度彼に連絡するために自分の部屋に戻った。

電話に出て状況を聞いた彼は、こう言った。

「やっぱりね…。日本では職業の有無って大きいよね。そういう反応が来ると思ったんだ。でも、だまってるわけにはいかないし。どうしてもご両親が反対なら、もう一度タイミングを見てやり直すしかないのかな…。本当にごめんね、こんなことになって。とりあえず日本は行くから。また後で電話する。」

といって電話は切れた。彼は冷静だった。正直、私は腹がたつのを抑えきれない。なんでここまで来て、手続きの「やり直し」の可能性を考慮できるの?まったく理解不能だった。

ー 本当に??結婚しないの…?このタイミングで…?まだ結婚まで時間をかけるの?呆然として眺める携帯に涙がぼたぼたとこぼれ落ちる。口元がぐぐっと歪み、への字になるのを止められない。

ライトを消したまま布団にもぐり込む。

ーどうしよう、どうしよう。彼も親を無視してまで結婚手続きを進めることは考えていない。今回婚姻届を出せなかったら、半年以上は後ろ倒しだ。どうしよう。また遠くで離れ離れになって、先の見えない関係をずっといつまで続けるの?いつまで?次いつ会えるかもわからないのに。

解決策を導けない考えだけが頭をめぐる。私は体をぎゅっと丸めることしかできない。

しばらくして、後ろからすーっとふすまを引く音がした。振り向くとふすまが開いて廊下の光が差し込んでいる。母の影が廊下のライトを背にして浮かび上がっていた。

目を向けると、母の顔は逆光でよく見えないが、泣いていた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで抑えている。

母は、声に詰まりつつ、言葉を途切れ途切れにしながらいった。


「れとちゃんが大事だから…。幸せになってほしいから、結婚をとめたの。焦って決めていいことなんてないから。わかって。だって、無職の人と一緒になったらあとから大変だから。…でもこれ以上結婚に反対したら、れとちゃんが幸せになれないって思ってるのもわかる。…だからね、お父さんともちゃんと話してね、お父さんもお母さんもとめないことにしたの。

…明日、結婚してらっしゃい。きっと2人なら大丈夫って、大丈夫って信じることにしたの。れとちゃん、ずっと1人で、外国で、誰の助けも頼らずに生きてきたもんね。」

私は拍子抜けして、ぽかんとした顔をあげた。とめどなく流れ落ちる涙で、顔はぐしゃぐしゃだった。

「え…?」言葉がつまってうまくでてこない。

「…あぁ…?うん、うん、ありがとう、ありがとぉ…。大丈夫、私達、大丈夫。うん、ありがとう。」

やっとのことで口を開くと、なんとも言葉の形をなしていない言葉が飛びだした。

「うん、じゃ、おやすみなさい。」そういうと、母は静かにふすまを閉めた。

私は、ふとんにくるまった。ひきつるような泣き声を数回出したあと、安堵感がお腹からこみ上げてくるのを感じた。一気に安心した。



「…この数時間はなんだったんだ?笑」突然、一気にすべてが滑稽に思えた。口元はすっかりゆるんで、笑い泣きしていた。

両親からちゃんとゴーサインが出た。もう大丈夫。私は、彼に両親との会話の結果をテキストで送った。そして、あっという間に眠りについた。

翌日、起きてリビングルームに行くと、両親は何も無かったかのように普通通りに朝食を食べていた。普段は喜怒哀楽をあまり表現しない家族なので、なんだか気恥ずかしい。

「じゃ、空港行ってくるね。」

「はい、いってらっしゃい。気をつけてね。」

玄関を出ると、暖かい春の乾いた空気が私をつつみ込んだ。道の両脇には薄白い桜が満開に咲きほこり、ときおり強めに吹く風に花びらが舞いあがっていた。





長文をお読みいただき、ありがとうございました。



ちなみに、マニュエルは仕事を失いませんでした。そして、焦って結婚したような形になったけど、私はまだ世界一幸せです。



というわけで、この事件は、私と両親にとって謎の試練でした。今となっては、よい思い出です。



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