多様性が叫ばれるようになって久しいよね。
セサミストリートって多様性があるって聞くけど、どういうこと?
セサミストリートは、1969年の開始当初から、多様性を尊重し放送を行っていることで有名です。
キャストにもさまざまな人種、種族が登場し、それぞれが境界なく「友人関係」を築いている姿が描かれています。
昨今、SNSの発達により多様性が叫ばれるようになりました。しかし、セサミストリートではそれ以前、1969年の開始当初からずっと多様性を訴える姿勢を貫いています。
ほかの番組ではタブーとされる人種問題や社会問題、マイノリティの問題などに蓋をせず、積極的に扱ってきました。
この記事では、セサミストリートにより「多様性がどのように発信されてきたか」を学べます。
最後のまとめに、公式セサミストリートの「多様性カルタ(日本語)」のページもへのリンクも案内しています。無料でダウンロードできるので、ぜひチェックしてみてください。
それでは、さっそくご案内しますね。
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セサミストリートと多様性|どんな内容が学べる?
セサミストリートでどのような多様性の問題が扱われてきたかみてみましょう。
基本的には以下の2つです。
✔ 人種の多様性
✔ 社会の多様性
少しくわしくみてみましょう。
人種の多様性
1969年にはじまったセサミストリートでは、白人、アジア人、黒人すべてのキャストが出演し、人種の多様性が見られます。
そして、すべてのエピソードで異なる肌の色の子どもたちが一緒に遊ぶ様子が映し出されています。
そして、メインキャラクターであるビッグバードやエルモ、クッキーモンスター、ロジータ、アビー、オスカーなどはモンスターや妖精、鳥といろいろな種類で、いろいろな色・形をしていますよね。
これらのキャラクターは、とくに何かの人種に似せて作られているわけではありません。
たくさんの種類のキャラクターを登場させることで、「世の中にはこんなキャラクターもいるんだよ。」と多様性を示しています。
アメリカでは、一般的に、メディアに登場する人物には人種的なかたよりがあることが多くありました。
しかし、そのようなメディアの人種的にかたよった大きな潮流の中で、セサミストリートは、さまざまな人種、種類の人々を登場させ、人間の多様性をずっと示し続けています。
社会の多様性
セサミストリートでは、それぞれの時代背景に合わせ、社会問題やさまざまな背景を持つ人々にフォーカスをあて、社会の多様性について情報を発信してきました。
具体的には過去、「いじめ」や「離婚」などの問題や、「養子」、「女性のエンパワメント」などが取り上げられています。
昨今では「軍に配備される両親を持つ子どもたち」、「刑務所に親が収監された子どもたち」、「家なき子」など、複雑な家庭背景を持つ子どもについてのトピックの放送もなされました。
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セサミストリートと多様性|さまざまな個性・背景を持って登場した人物
セサミストリートには、時代に合わせ「さまざまな個性」や「複雑な背景を持つキャラクター」が登場します。
それぞれのキャラクターの背景、経験、心境などが丁寧に描写されていて、「個人の多様性」を学べます。
いくつかの登場人物を見てみましょう。
カミ
カミは、HIV陽性の女の子です。南アフリカのタカラ二・セサミに登場します。黄色く、元気で明るい性格のモンスターです。
彼女の登場で、HIV陽性の人と友達になったり抱きついたりしても病気はうつらないというメッセージが発信されました。
▲カミ「学校のみんなは『HIV陽性がうつるから』って私と遊んでくれないの。」
友人「うつらないよ!って言いにいこう!」
▲クリントン元大統領と会談するカミ。
ジュリア
ジュリアは、自閉症を持つ女の子です。ジュリアは、コミュニケーション方法や感情の処理の仕方がほかの人とは少し違います。
自閉症を持つ場合、どのようにほかの人と違う行動をとりえるのか、ジュリアはそれを教えてくれます。
▲ピザを頼んでも正しいのが来ない…。ストレスを表現するジュリアです。
アリストートル
アリストートルは、1980年頃に登場した、視覚障害を持つモンスターです。
ほかの登場人物に点字で本を読み聞かせしたり、料理に挑戦したりしています。
▲サンドイッチを作るのに挑戦するアリストートル。
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セサミストリートと多様性|具体的な話が学べるエピソード
セサミストリートでは、多様性を示すストーリーは数多くあります。
具体的なエピソードを一部ご紹介します。
見た目の違い
セサミストリートでは、異なる人種、モンスター、妖精とさまざまな登場人物がいます。
そして、「どんな見た目の違いがあっても友達になれる」というメッセージを伝えてきました。
▲「誰でも友達になれる!」の歌。
▲セサミストリートの本で多様性を学びます。「みーんな見た目は違うけど、体のパーツの機能は一緒」というお話。
読んでいる本は、こちらです。
“We are Different, We’re the Same”ーみんなちがって、みんないっしょ。
We’re Different, We’re the Same (Sesame Street) – Picture Book (Amazon USA)
▲毎日街で会う人は、みんな友達。色んな国や地域から来た人がいるよね。
▲「肌の色は、メラニンによって変わるんだよね。」と話すヴェスとイライジャとエルモ。
▲1993年の話。ジーナは、黒人のサヴィオンとバスケットボールをしていて、隣人からクレームの電話を受けます。「肌の色が違ったって友達になっていい!」と反論しています。
▲Black Lives Matterの運動が起きた際は、CNNとタッグが組まれ、「人種差別について考えるスペシャル回」が放送されました。
▲「差別に対抗するには?」とみんなで歌を歌っています。
▲「1人1人が誰かで、みんな美しく、自分を誇りに思っていい。みんなで人種差別に対抗しよう」という歌です。
上記のとおり、セサミストリートは開始当初から人種の見た目の多様性について情報を発信していて、「みんな友達になれること」を伝え続けてています。
髪の毛の違い
髪の毛の違いについても取り上げられています。
このエピソードは、エチオピアから養子として引き取られた5歳の女の子が人形遊びをしていて「ブロンドの、長くてまっすぐな髪がほしい」とつぶやいたのをきっかけに作られました。
▲「アフロの髪の毛にクリップをつけてもいいし、リボンもいいね。コーンロウも似合うし」と歌っています。
障碍(しょうがい)
しょうがいのある人たちも番組に登場しています。
視覚、聴覚、身体障碍者、今までにいろいろな人たちが登場しました。
一部をみてみましょう。
▲聴覚障碍者のトロイと多様性を学びます。みんな違う個性があります。そして、みんな友達になれるんです。
▲タラは車いすに乗っていますが、ダンスもレースもします。
▲ジェイソンはダウン症です。アーニーと一緒に文字を学びます。
いじめ・自分らしさ
セサミストリートでは、「自分らしさを肯定する」話も放送しています。
”Good Birds Club(よい鳥のクラブ)”に招かれたビッグバード。しかし、クラブでは、ほかの鳥がビッグバードの特徴をからかい、いじめます。
自分の特徴を変えればいいと考えたビッグバードは、自分の色や大きさを魔法で変えます。
しかし、最終的には、ビッグバードの特徴をからかう鳥を残し、ほかの鳥はすべてクラブを脱退。「ありのままの自分でいい」クラブに移籍します。
▲ビッグバードは、クラブに入るために自分のからだを変えます。でも、そんな必要はないんです。
嗜好の違い
嗜好の違いについては、歌がうたわれています。
男の子、女の子関係なく海賊にもなれるし、人形遊びもしていい、なんのコスチュームを着てもいいし、ティータイムごっこをしてもいい。
「自分がしたいと思うことをすればいい」という内容の歌詞になっています。
▲みんな好きなコスチュームを着て、好きなことをしよう。
離婚問題
離婚問題も触れられています。
メインキャラクターの1人であるアビーの両親は、離婚しています。アビーは、離婚する両親のかたわらで状況の変化に戸惑ったことを友人に話します。
妖精であるアビーの母親は、1人の男の子を持つモンスターと再婚。アビーには、義理の弟ができます。
家族の変化を自分なりに消化し、新しい家族の形を受け入れていくアビーの姿が描かれます。
▲アビーの両親は離婚したけど、パパもママもアビーを愛してる。家族の形にもいろんな形があるね。
▲新しい家族と一緒で、みんなを愛してる。だけど、本当のパパも恋しいアビー。
養子
養子については、80年代と2006年の2回取り上げられています。
1回目は、ゴードンとスーザンが養子として迎えたマイルズ、そして2回目は、ジーナが養子として迎えたマルコの話です。
いずれも、養子で迎えられた子どもでも「親が子を愛する気持ちは同じ」であることが伝わるエピソードです。
養子を迎えた家族も「普通の家族と同じ」であることを紹介しています。
▲マイルズを養子に迎え、幸せそうなゴードンとスーザン。
▲グアテマラから養子マルコを迎えたジーナ。
▲ジーナの養子マルコを迎えるのに、ストリートのみんなは大盛り上がりです。
女性のエンパワメント
セサミストリートは、女性のエンパワメントについても何度も取り上げています。
女性だからといって職業に限りはなく、どんな仕事でも挑戦できるというメッセージが発信されています。
▲1974年の702話。マリアは土木建築関係の仕事につきます。女性がこのような仕事につくのは、当時では珍しいことでした。
▲「女の子だって、将来は何の職業にでも就ける!」の歌です。
親が刑務所に収監された子ども
2013年には、親が刑務所に収監された子どものストーリーが放送されました。
落ち込んでつらさを隠せないアレックスに、ソフィアは「私もあなたくらいの頃に親が収監されたの」と話します。
そして、アレックスの友人たちは、「アレックスは1人じゃない」と言葉をかけます。
親が収監された1人の少年がどのような心境をくぐり抜けなければならないのか、どんなサポートを必要とするかを考えさせられます。
▲アレックスのお父さんは刑務所に収監されていて、その事実を話すのもつらい状況です。
ホームレスになった子ども
2018年には、ホームレスの問題がトピックとして取り上げられました。
リリーは、家族と一緒に住む場所を失い、ソフィーの家に間借りしています。家を失ったつらい心境と、周りの友人がリリーとその家族を支援する状況が描写されています。
▲家がなくなったリリーは、以前住んでいた家を思い出し、つらい心境を吐露します。
里親
2019年には、里親の問題が取り上げられました。
モンスターのカルリには、母親がいます。しかし、カルリの母親は薬物による影響を受けており、カルリを育てられません。そのため、カルリは里親に引き渡されています。
カルリの登場するエピソードでは、母親から引き離され、里親により育てられるカルリの心境と経験がつづられます。
▲カルリの居場所はどこなんだろう?不安でいっぱい。
軍に配属された親を持つこども
2006年に、セサミストリートは軍関係者をつなげるための作品の放送を行いました。
ある回では、エルモの父親ルーイが軍に参加するために家を離れました。また、ほかの回では、ロジータの父親が身体に損傷を負った状態で軍役から戻ります。
軍関係者の家族が、どんな苦難、感情を経験していくかが描かれています。
▲エルモのパパは軍に配属され、エルモとエルモママはパパに会えなくなります。
▲車いすに乗るようになったロジータパパ。ロジータは感情が消化できません。
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セサミストリートと多様性|まとめ
セサミストリートと多様性についてまとめました。
アメリカから発信されるハリウッドムービーなどを見ると、アメリカという国のキラキラした部分だけが見えがちです。
しかし、実際のところ、アメリカはたくさんの問題を抱えています。
その1つが、多様性が軽視されてきたことです。とくに人種問題については、人種間のわだかまりが溶けるまでにまだ多くの時間がかかるでしょう。
そんな社会のなかで、セサミストリートはずっと多様性を訴え続けてきました。
セサミストリートに「トピックの1つ」として扱われることで、多くの人が様々な問題について認識し、理解を深めてきたはずです。
日本では、多様性のトピックは「特殊」なこととして扱われるか、お涙頂戴の番組などでのみ取りざたされることが多いように思います。
または、あたかも問題は存在しないかのように「触れずに蓋をする」のが一般的でした。
多様性は「特別なこと」、「特殊なこと」として扱われる限り、「だれの生活のなかにもありうる一般的なこと」として認識されずらくなります。
そうではなくて、一般的なメディアでも通常の風景の一部として、どんな人間にも起こりえるドラマの1つとして、「ほかの一般的なトピック同様に多様性を取り扱うべき」と考えます。
宗教、育った背景、病気、障碍、嗜好、つらい経験、何についても、目につかなければ知ることはできません。そして知識をえず、理解できなければ偏見を生みます。
当事者の背景を知り、理解することで、不要な偏見や差別をなくせる可能性は高まります。
セサミストリートは、人間社会の影に隠されがちな問題を、身近にありそうなストーリーに仕立てて提起しています。
また、マペットのおかげで、子どもから大人まで親しみやすく、感情移入もしやすくもなっています。
日本の子ども向け番組では、多様性に関わるシリアスなトピックのストーリーは作られませんよね。ですが多様性の問題は、「子どもが偏見の意識を持ち出す以前」から教え、認識させてよいと思います。
偏見は、けっこう低年齢で形成されるものです。いじめや差別が起こる一部の原因も、多様性を認識しないがゆえです。
社会において小学校に入る前から、多様性の問題についての知識を教えることは大切なことだと思います。
長くなりました。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
セサミストリートの多様性カルタは、下のボタンから公式ページに飛べます。そちらからダウンロードできます。
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では、また♪
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▼参考